がん告知ロールプレイ

 医学部の授業で、「がんの告知」を模擬的に体験する授業がありました。
 「ロールプレイ」形式で、学生同士が医者役、患者役、ご家族役を分担して体験してみるという形です。仮想の患者さんの病状や経緯、ご家族を含めた家庭状況などの情報について、医者役、患者役、家族役が、それぞれが知りうる情報だけを予め頭に入れた上で実演に臨みます。

 たとえば医者役には、検査結果などの病状や、余命などの予後などに加えて、あらかじめご家族に話をした時のご家族の反応や、ご家族が小さなお子さんを抱えていること、年老いたご両親の面倒を見ていることなどの情報が与えられます。
 一方、家族役には病状に加え、患者本人の性格などの情報が与えられます。
 そして患者役の本人には本当の病状は知らされず、「大したことのない病気だと説明されてきたこと」や養うべき家族のことだけが知らされています。入院中の親の介護や子どもの様子が気になる状況の中で、「今後いつ調子が良くなってきて、一体いつ復帰できるのか」という疑問を抱いていて、「今度話を聞いてみよう」と考えているというような感じです。
 そこで、今後の治療について話をする場が与えられて、ぶっつけの実演が開始されます。

 今回の講義の主題、「告知」の問題については、頭では理解しているつもりでした。
ロールプレイについても、頭の中では「こんなもんだろう」というイメージは持っていました。

 しかし、実際にロールプレイをしてみることは想像とはまったく異なりました。

 今回は患者役をしたのですが、冒頭で今後の生活のことを聞いてすぐに告知を受けました。
 なるほど「頭が真っ白になる」ことまでも模擬的に体験することができました。
 頭の中で子供のことや親のことなどいろいろ考えつつも、突然のことでそれぞれ考えはまとまらず、何を口にしたらいいのかわからないまま、「外形」としては言葉通り「絶句状態」でした。
 「絶句」とは、「頭の中が真っ白」とは、どういうことなのか、わずかだけでも感じられたように思いました。これが本当に自分の事だったらと考えると、想像を絶します。

 これまで単純に「告知は行った方がいい」と考えていました。
 患者の知る権利、考える権利、選択する権利を考えたということもありますし、医療者側の責任逃れ的思いもあったと思います。

 しかし、安易だったというか、まだ考えるべきことがたくさんあると気付かされました。いずれ告知は行うにしても、その行い方はケースごとに異なり、セオリーなんてものはあるはずのないものかもしれません。その患者と家族に最もふさわしいコミュニケーションをするためには、当然その患者や家族の人となりや背景まで知る必要があります。まさに「患者のための医療」というのは狭義の医療技術が優れているだけではない、それが全人的医療なのだろうと思いました。

 正直、このように考えると、改めてなんと責任の重い、深い思慮のいる立場に就こうとしているのか、身の引き締まる思いがします。しかし、手を抜くことができない、真剣に取り組くべき役割を将来任せてもらえるのだという、やりがいも同時に感じます。

テーマ : 医療・病気・治療 - ジャンル : 心と身体

コメント

はじめまして


訪問者リストからお邪魔しました。
ずっとリストに残してて気になっていたのですが、読むところまでいってなくて、
今日お邪魔しました。

まずは医学生になられた事。おめでとうございます。
もともと優秀な方ですし、生物の研究という仕事畑を考えると、全くの畑違いとは
思えないですね。

それでも大変な決断でしたね。
一人前の医者となるにはまだまだ10年はかかりますよね。
心身共に健康で乗り切っていただきたいと思います。
医者となったら、一度患者の経験をするのもいいかと思いますが。(^−^)

私の体験で、がん告知の模様をブログで書いてます。
良かったら読んでみて下さい。

細胞診の結果を聞いた時
http://aerochan.blog33.fc2.com/blog-entry-43.html

組織診後のがん告知の時
http://aerochan.blog33.fc2.com/blog-entry-47.html


安定した生活を捨て、医学の道を目指した方ならきっと患者側にたったステキな
お医者さんになられる事と思います。
最後に更新大変でしょうが、応援しています。(^。^)y-.。o○

Re:はじめまして

> ガーネットさん

はじめまして。
コメントいただきありがとうございます。

医学部に入って改めてこう思います。
医学部入学から医者になり経験を積んでいく、そんなキャリアの中で得られる世界は本当に狭く偏ったものです。
とはいえ僕が経験したのはたかが7年間の会社員生活ですが、それでもできるだけそんな経験や人とのつながりを活かした医療者になりたい、そう思っています。
期待を裏切らないように頑張っていきたいと思います。

ところで、ガーネットさんのブログ、拝見しました。
医療者のひとことが心に与える影響の大きさが印象的でした。どのような心遣いで接するかによって、希望や安心が生まれたり、必要以上に不安が生まれたり。当事者である患者さんが抱く気持ちと、医療が日常である医療者との間にはギャップが生じがちだと思います。これからどっぷり医学教育に身を投じていく中で、そんな気持ちを忘れないようにしたいと思います。

「患者も賢くなくては」「患者が医療者を育てる」というのも印象に残ったところです。そんな視点でまた今度記事を書いてみたいと思います。ありがとうございました。

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